文章を読んでいると読み上げる声が聞こえる
小説を読んでいるとセリフごとに違う人の声がする
皆さんも本や文章を読む時、脳内で読み上げる声がしていることに気付いたことはありませんか?
この文章を読み上げる脳内の声は「内なる声」としばしば囁かれ、調査されてきました。
特にこの内なる声が流行ったのは(流行ったと言うのが正しいかはわかりませんが)数年前です。
「読書中に内なる声がするか」という調査の結果発表もありました。
この記事では内なる声に関する論文に触れながら、内なる声の働きについて解説します。
そもそも読書における「内なる声」とは?
人間が文章を読む時。
それはニュース記事を読む時やエッセイを読む時、小説を読む時などさまざまです。
しかし文字を辿れば映像やイメージとして、情景が浮かんでくることも少なくはないでしょう。
(個人の認識の違いはあるでしょうが)
その認識を助ける、または認識に必要なプロセスが「内なる声」なのです。
人間は文字を追い、音声として認識し、それを映像化するという過程を踏んで文章を味わいます。
気付いたことがなくても、人間誰しもが行っている認識のプロセスです。
速読の世界では、この音声認識という過程を取り除いて、文字を追うのと同時に映像やイメージを脳内で結び合わせる練習をしたりします。(視読と言います)
脳内で当たり前に行われている工程を一つすっ飛ばすのですから、読むスピードが上がるのも、それでいて内容がきちんと入ることも理解できますよね。
逆にこのトレーニングを積んでいない、そもそも概念として知らない人が速読に挑戦しようとしても、内容が入らないただ目が滑っただけの読書のフリになってしまいます。
速読の世界では、音声認識が読書の過程してあることが認識されているからこそ、それに対する対処をしてスピードを上げているのです。
つまり人間はそれだけ「当たり前に内なる声を使っている」とも言えますね。
読書中の内なる声に関して行われた調査
英語圏で行われた調査では、2006〜2014年にかけて合計136件の回答を得た複数の質問を調査しました。(Yahoo Answersで実施)
その結果、82.5%の回答者が「読書中に内なる声が聞こえる」と答え、10.6%の回答者は「聞こえない」と反論しました。
さらに詳しく見てみると、「内なる声が聞こえる」と答えた回答者のうち13%程度の方は、「本の内容への関心度によって聞こえる時と聞こえない時がある」と回答したそうです。
内なる声が聞こえる | 内なる声が聞こえない | 聞こえる時と聞こえない時がある |
82.5% | 10.6% | 13% |
100%中 | 100%中 | 82.5%中 |
もし内なる声がしないという方も問題ありません。10〜23%の人が全く聞こえなかったり、聞こえない時があると言う人なのですから。
さらにこの調査結果はWebサイト上で行われたため、「聞こえる」と言う人に書き込みが集中した可能性も考えられます。
そこで日本の大学も、学内という小さい規模でありながら論文を発表していますので見てみましょう。
こちらの調査では69名中37名が「内なる声が聞こえる」と回答し、32名が聞こえないと回答しました。
内なる声が聞こえる | 内なる声が聞こえない | 全体 |
37名 | 32名 | 69名 |
54% | 46% | 100% |
見てわかる通り、結果は約半数となりました。
この調査は母数は少ないものの日本で行われた調査であるため、英語圏で行われた調査よりも私たち日本人のリアルに近い結果ではないかと考えられます。
読書中の内なる声の働きとは?
認識のプロセスの一環である内なる声。
この内なる声は、文字を目で追ったときに単語や言葉の意味が繋がるように「考える」工程で発生します。
速読ではこの工程を飛ばし、イメージと文字を直接結びつけることで、意味を理解しながらも早く読むことができます。
速読トレーニングをしていない方で、声が聞こえない方の中には、内容が頭に入らないという方もいるのではないですか?
それは目が文字を滑ってしまっていて、イメージまで達していないということです。
「声が聞こえるということは、実際にあなたが優れた読書家であることを示しています。内なる声を持っていない人は、識字レベルが低いケースが多くなっています」
これはシェフィールド大学の心理学教授の言葉です。
内なる声に関する研究はまだまだ少なく、教授の述べているデータも覆される可能性はあります。
あくまで傾向の一つですが、内なる声は鍛えた方が読書の効果が高くなる可能性があります。
- 自分自身、読書中に内なる声がするか
- お子さんがいる方は子どもにも声がするか
聞いてみると面白いかもしれません。
もしかすると、子どもは大人より多様な声を聞き分けているかもしれませんよ。
内なる声を育てるためには?
特に子どもの発育に際して、内なる声を育てることは大切です。
一般的には音読という過程を経て、子どもは文字・言葉を咀嚼して内容を理解する工程を学びます。
しかし私も心当たりがありますが、音読が宿題にあっても、実際に音読をしないことは少なくありません。
親の立場の場合、音読をよく聞いてあげ、よく褒めることで、子どもの持つ音読への不快感を軽減させてあげましょう。
またある程度成熟した子どもや大人の場合、内なる声を制御する速読のトレーニングをすることも、内なる声のトレーニングになると言えます。
内なる声を抑制するというのは、内なる声を意識してコントロールするということ。
内なる声を育てる第一歩は、内なる声を意識・認識することです。
そもそも声が聞こえない場合で、声が聞こえるという状況を知りたい方は、まずは音読をしてみる。
- 内なる声が聞こえているけど、さらに読書の質を上げたい
- 内容はきちんと理解しつつ読むスピードを上げたい
という方は速読法を習得してみるのも良いでしょう。
速読をすると情緒を味わえないのではないか
そう考える人もいますよね。
しかしすべての書籍を早く読む必要なんてないんです。
小説をゆっくり味わいたい時は速読をやめればいいだけ。
すべてを統一する必要はありません。
それに本来の速読は、文字からイメージを直接繋ぎ合わせる読書法。
単語と意味を繋ぎ合わせる工程、音声認識という工程を省略しているからスピードが上がるんです。
内容の理解に問題が出るのであれば、それは速読でなく流し読みや目を滑らせているだけと言えるのではないでしょうか。
正しい速読を身につければ、内容理解には問題なく、さらに自分の意思でゆっくりと読むこともできるはずです。
内なる声のこれから
内なる声の研究はこれからも行われていくことでしょう。
内なる声は読書の質や速読にも深く関わっており、さらにこれまで着目されることが少ない分野でした。
この記事にたどり着いた皆さんは、ふと思い浮かんで調べた方が多いかと思います。
もしくは他の記事を読んで知り、この記事にたどり着いたのかもしれません。
しかしその気付きこそが、内なる声の認識の第一段階です。
これからも内なる声を育てて、研究の行末を見守っていきましょう。
ちなみに内なる声は「幻聴障害」の研究にも活かせるのではないか、と囁かれています。
今度どのように転ぶか楽しみな分野です。
しかしその反面、幻聴障害の内容に関わるのではないか、と言われていると言えば、少し不安に思う方もいるかもしれません。
これは私個人の認識ですが、内なる声は読書を楽しくしてくれるスパイスだと考えています。
文字を追えば情景が浮かび、誰かが話す声が聞こえる。
ときには女性の声、ときには男性の声、震えた声、怒鳴った声、自分の認識に応じた声が聞こえてきます。
読書をしながら映画やアニメを観ているような臨場感を味わえる「内なる声」。
それを楽しめることは悪いことではないでしょう。
皆さんの考えも教えていただける機会があれば嬉しいです。
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